吾輩はクズである

「どうする。この場合。被害届けは――」
「おおごとにしたくないです」
「……そうか。連絡して迎えにきてもらえる家族は」


うつむきがちに、頭を横に振る。

ワケあり少女感、出てるかな。


呼べばすぐに車を出してもらえるけど呼ばないよ。

せっかくセンセと2人になれたんだから。


「君は、ここで降りる予定だったのか?」
「いえ」
「そうだったのか。なら。申し訳ないことをしたな」


センセ、気づいてないね。

わたしが先生のクラスの生徒ってこと。


厳密に言えば

パパに頼んでセンセを新任なのに担任にしてもらって、そのクラスの生徒になったこと。


それも仕方ないか。

髪型も違えばメイクで3歳は老けてるだろうし、口元のほくろはニセモノだし。


女の子は別人に変身できるんだよ、センセ。


「N駅まで……乗るつもりでした」
「そうか。なら、俺と同じだ」


一緒で当然ですよ。

わたしの目的地は、我が家ではなく、あなたの家なんですから。

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