甘味(短編集)
いつもはノロノロ歩く私に合わせて歩いてるのに、今日は半ば引っ張られるようにして歩く。
「て、晃く」
「勝手に名前で呼ばれんじゃないよ」
「え?」
家から徒歩20分程の高校は、困惑してる間に見えなくなり、あっという間に家の前。
自宅を通り越して、五軒先の晃くんの家に着く。
いつも晃くんの家に行く時は一旦別れて着替えてからだけど、今日はそれもない。
ぐいぐい手を引かれて、晃くんのお部屋。
強引に引っ張っていた力は緩んで、やんわりと私をベッドに座らせる。
自分はカバンを置いて着ていたブレザーを脱ぎ、私の近くまできた。
いつもより、もっと分からない表情。
手のひらが私の頬を包んだと思ったら、晃くんの顔がドアップ。
「……んんっ…ん……ぅむ……ふぁ」
チュッと音を立てて離れる唇。
「て、晃くん?どうしたの?」
ちょっとだけ、怖い。