甘味(短編集)
晃くんは困惑してる私の顔をわかっているのか、ギュッと抱きついてくる。
「晃くん?」
「勝手に」
「うん?」
「勝手に名前呼ばれてんな」
へ?と声を出したら、抱きしめる力がもっと強くなる。
この状況でこの締め付けが心地いいと思っちゃう私は相当バカ。
「1000歩譲って、志帆が名前を呼ぶのは許すけど、アイツに志帆って呼ばすのはダメ」
それって………
「晃くんも志帆って呼んでくれるよ?」
ニヤニヤしちゃう顔を隠すように晃くんの胸にスリスリする。
晃くんの鼓動が、ちょっと早くなった気がする。
「俺は志帆の所用者だからいいんだ」
「所有者?」
「志帆は俺のもの。俺のものを勝手に呼ぶとか許さない」
嫉妬だよ悪いかっ。
やっぱり、ヤキモチやいてくれた。