クローバー2~愛情~
練馬駅に着くころには、雨はすっかりやんでいた。

「ね、今ごろ、坂上店長、陽平さんと会ってるころかな」

「そうだな。きっと、プロポーズされてるよ」

「私もそう思う」

アパートに着くと、和希が美穂を抱きしめて熱いキスをした。

「美穂が欲しい」

「それは夕食のあとで・・・」

「いや、先に美穂!!」

和希は美穂をお姫様抱っこすると、ベッドルームへ連れて行った。

「ハッピーバースデー、美穂」

和希は美穂に優しくキスをして、スイートベッドタイムに入ったのだった・・・。

美穂は、余韻にぼーっとしながら、和希に聞いた。

「今、何時?」

「8時半。そろそろ、シチュー、あっためようか」

「うん、お腹空いた」

「僕も。美穂食べたけど、まだお腹空いてる」

「もうっ!」

2人はさっと服を着て、和希がシチューを温める。

「ケーキは冷蔵庫に入ってるから」

「うん」

温まったシチューをパンと一緒に食べながら、

「・・・そろそろ、美穂のご両親に挨拶に行かなきゃだな。結婚を前提に付き合ってますって」

「カズキくんのご両親にも会いたい。福岡だっけ?」

「びっくりするだろうなぁ。結婚の『け』の字も言ったことないから」

「まだ、結婚は先よね。来年、カズキくんが就職して、落ち着いてから?」

「そうだな。就職したいデザイン会社はいくつかあるけど」

「とりあえず、顔見せ、だね」

ドキドキする。つきあって、まだ、2ヶ月も経っていないのに結婚を考えるようになるなんて、思ってもみなかった。ある意味、美穂と和希は運命でつながっているのかもしれない、と美穂は思った。

「さて、お待たせのケーキです。じゃ~ん!」

そこにあったのは、美穂の大好きなレアチーズケーキをベースにしたデコレーションケーキだった。”HAPPY BIRTHDAY MIHO FROM KAZUKI" と書いた、ハート形のプレートが乗っている。

「さすが、カズキくん、私の好み、知り尽くしてるね」

「当たり前だろ?どれだけ、密な時間、過ごしたと思ってるんだよ」

「あはは、そっか。でも、これだけ大きいケーキ、2人で食べたら太っちゃいそう」

「ぽっちゃりした美穂も可愛いよ」

「そんなこと言うと、思いっきり食べちゃうよ♡」

「食べよう、食べよう!」

それにしても、2人で18cm丸型のレアチーズケーキ1台は重かった。お腹いっぱいになった。

「ほら、先に美穂、食べといてよかっただろ?食べ損ねるとこだった」

「ん~、もうっ、カズキくんったら♡」

「あ~、もう、10時半かぁ。そろそろ帰らなきゃ、だね。送っていくよ」

「ありがとう。東中野に早めについたら、お散歩しよ」

「いや・・・ご両親の印象をよくするために、早めに帰したい」

「それもそうだね。私のほうから、両親にカズキくんが会いたがってること、伝えておくね」

「よろしくぅ!」

大江戸線で東中野駅へ。美穂を送り届けて、和希は自分の右薬指にしているリングを見つめた。婚約指輪と結婚指輪は自分がデザインする!そう言い聞かせながら。
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