クローバー2~愛情~
それから、翌週の金曜日まで、美穂は店長業務の実践を任されていた。そんな金曜の午後、一組のカップルがイートインしようとしていた。

「美紀、このショートケーキも食べたいけど、このミルフィーユもいいなぁ」

「じゃあ、半分こしようかあ」

「でも、ミルフィーユ半分に切るって、至難の業よ?」

その様子を見ながら、奈津美さんが美穂に、うまくやりなさい、と目で指図した。

「あの~、もしよろしければ、ショートケーキとミルフィーユ、こちらで半分にお切りしますが?」

「まじっすか?いいんっすか?お願いします」

「そうしていただけると、嬉しいです」

彼女さんも嬉しそうだった。

「少々お待ちください。奥でカットします」

と美穂は言い、奥にカットしに行った。ショートケーキとミルフィーユを乗せた皿を2つ持って、先ほどのお客さまに渡した。

「ありがとうございます」

2人に感謝され、胸をなでおろしていた。

「美穂ちゃん、よくやったわ。パーフェクトよ」

奈津美が言ってくれた。お客に寄り添う店、CLOVER。奈津美さんが作り上げたこの店を絶対に守り抜いていくぞ、と心に誓った瞬間だった。

「美穂ちゃん、5時上がりね。私は、6時までだから、7時に約束のレストランで待っててね」

「はい。カズキくんと2人で待ってます・・・お先に失礼します」

「お疲れさま」

和希にメールすると、ちょうど新桜台の駅に着いたところだという。そこで待ってて、とメールを打ち、急ぐ。

「カズキくん、お待たせ」

「レストランは青山だっけ」

「だね。初めて行くレストランでドキドキ。奈津美さんたちのなじみのレストランだって」

「今日の恰好、おしゃれだね」

ペールオレンジのシンプルなワンピースだ。もちろん、和希のくれたネックレスと指輪もしている。

「ありがとう。カズキくんも素敵よ」

カジュアルすぎず、フォーマルすぎず、ストライプシャツにジャケットを羽織っている。

大江戸線で青山一丁目まで行った。

街に出た、そのとき、男の声で呼び止められた。

「美穂・・・美穂だろ?」

「えっ、誰?」

連れの女性がいぶかし気に(拓也)を見た。
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