クローバー2~愛情~
待ち合わせのレストランに行く前に、雑貨店に寄った。

「海外に行くんだから、ワレモノじゃないほうがいいよね」

と言う美穂に

「じゃないにしても、結婚のお祝いにワレモノはよくないような・・・でも、マグカップとか贈るよな?まぁ、美穂の言うとおり、空輸だからワレモノは避けよう」

と答える和希。・・・と、何かを見つけたようで

「これは?2匹ペアで。白とパープルとか」

それは、手のひらサイズのテディベアだった。可愛い。

「うん。それにしよ。箱に入れて、包んでもらって。急がなきゃ、あんまり時間がないよ」

係の人に包んでもらって、支払いをして、奈津美さんと陽平さんの選んだレストランに急ぐ。

「ポルト・ヴェーネレ」というパステルカラーを基調にしたイタリアンリストランテだった。予約席に通されると、2人はまだ来ていなかった。

「かわいいお店だね。ポルト・ベーネレってなんだろ?」

という美穂に、ウェイターさんが、

「イタリア、リグーリア州の小さな港町です。『女神の港』と言う意味ですよ。こんな感じです。



「うわぁっ、きれい」

と言う美穂に、和希がささやいた。

「新婚旅行はイタリアにする?」

ぼっ!と赤くなる美穂。新婚旅行・・・分かっていたことだけど、和希は本気で美穂との結婚を考えてくれている。

「うん、行きたい・・・ポルト・ヴェーネレ」

「じゃあ、そうしよう。あ、もちろん、2年後に気が変わってなかったら、だけど」

「変わらない気がする・・・」

とってもロマンティックだもの。和希くんと行けたら・・・。

そうこうしているうちに、奈津美さんと陽平さんがやってきた。

「待たせちゃったかしら?ごめんなさいね」

「いえ、今来たところです」

と和希。

「和希がえらんでくれたの?このレストラン。すごく素敵ね」

「評判もいいようですよ」

と陽平さん。

とりあえず、陽平さんと美穂がはじめましての挨拶をして。

「じゃあ、さっそく、料理をオーダーしようか」

バジルソースのスパゲッティ、魚介のパスタ、トマトソースのニョッキ、カルボナーラのタリアテッレ、メインには、ホロホロ鳥のローストを頼んだ。

「あと少しですけど、店長がいなくなっても大丈夫なように、よろしくご指導ください」

「いつ、発つんでしたっけ」

と和希。

「6月の5日の予定でいるよ。会社の引継ぎもほぼ、ほぼ、終わった感じだ」

「そうなんですね。やっとお会いできたのに・・・ダブルデートとか、もっとしたかったんです」

「ここ2か月、超絶忙しかったからね。そのせいで奈津美を不安にさせてしまった」

「ごめんなさい、美穂ちゃん。和希にふらついたりして」

それは、美穂に、じゃなく

「陽平さんには謝ったんですよね?」

探るように言う美穂。仕事で忙しいときにほかの男に心を奪われていたとしたら・・・。

奈津美は陽平と目線を交わしあい。

「その話は、じっくりしたの。陽平だけを想っていられなかった弱さを謝ったし、陽平も私を掘っておいたことを謝ってくれたわ」

美穂と和希は胸をなでおろした。これで、2人の結婚につっかかるものは何もない。

「これ・・・2人から、結婚のお祝いです」

「ありがとう。開けていい」

と奈津美さん。

「もちろん。開けてください。気に入ってくれるといいんですけど」

箱を開けて、奈津美さんの第一声。

「かわいい・・・クローバー柄のシャツを着てるのね」

美穂が奈津美をまっすぐ見て

「どこにいても、CLOVERの店長は奈津美さんです。もちろん、私も一生懸命やりますが、あくまで私は代理ですから。帰国、待ってますね」


「ありがとう・・・美穂ちゃん」

奈津美さんの瞳の中にきらりと光るものを見た美穂と和希だった。
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