新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
―――時は、現在。
仕事を終えて、深琴の自宅に向かう。
「ここか…」
部屋番号を確認してエントランスのボタンを押す。
「【はい】」
そう言って、モニター画面に映ったのは俺と同じようなショート系でブラウン・ベージュ系の髪をした男の子。
「お前、夏輝か?」
「【ん。おじさん、誰?】」
「俺は、高田夏彦だ」
「【えっ、おじさん。本当に高田夏彦!?“あの夏彦くん”!?】」
夏輝はなぜか興奮した声で俺の名前を呼んだ。
「…そうだが…。深琴に…ママに代わってくれ」
「【今、開けるから入って来てよ。パパ!】」
「え…?」
そう言って、モニター画面が消えてエントランスのドアが開いた。
部屋の前に着きチャイムを鳴らすと、ドアが開いて幼い頃の俺によく似た夏輝が出て来た。
夏輝は俺だと確信すると、いきなり抱き着いてきた。
「本当に“夏彦くん”だ~~」
「…夏輝。お前、俺のこと知ってるのか?」
「うん!だって―――」
「―――夏輝、そんな所でなにして…っ」
少し奥のほうから、深琴が出て来て俺と目が合うと驚いたようで息を呑(の)む。
「…夏彦」
「深琴…」
お互いの名前を呼び合い、そのまま数秒間見つめ合っていた。
「ねぇ、ママ!」
「えっ、なに!?」
「パ…じゃなくて、夏彦くんと一緒に夕ごはん食べよう♪」
「でも…」
「俺…夕飯まだなんだ。夏輝、一緒に食べてくれるか?」
「うん!」
元気よく頷いてくれた夏輝に「よし!来い」と言って、両手を広げ抱きかかえてリビングに入る。
「ちょっと!なんで勝手に―――」
そう言って、深琴は俺たちの後を着いて来た。
夕食を食べながら、夏輝の仕草や『星』が好きな所は間違いなく俺譲りだ。
楽しそうにしている俺たちを見て、深琴はただ黙ってなにも言う事なかった。
21:00
「夏輝、そろそろ寝なさい」
「嫌!夏彦くんと『星の話』がしたい」
「夏輝!」
深琴の大きな声に夏輝は驚いたのか、体をピックと震わせた。
俺は賺(すか)さず優しく声をかける。
「夏輝、お前の部屋どこ?」
「ママの部屋の隣」
と、部屋の方向を指で指す。
「…お前の部屋を見たいんだけど、いいか?」
「うん」
俺は夏輝を抱きかかえて部屋に向かった。
夏輝の部屋。
―――パタン。
ドアを閉めると夏輝は俺と離れたくないのか、さっきよりも強く首に腕を回す。
「…夏輝?」
「僕、知ってるんだ。夏彦くんが僕の“パパ”ってこと」
…やっぱり、エントランスで聞いた“パパ”っていうのは気のせいじゃなかったか。
「じゃぁ、なんで“夏彦くん”なんだ?」
「ママが『“パパ”とは一緒にいられないの。だから“パパ”と呼んだらダメ。もし、私と“パパ”の話がしたい時は“夏彦くん”と呼びなさい』って言うんだ」
…そういう事か。
「深琴は“夏彦くん”のことなんて言ってた?」
そう質問すると、夏輝は少し考えて口を開いた。
「…『大嫌いな人』」
「……」
「…『――でも、大好きな人』」
「えっ…」
その言葉を聞いて、俺が少し驚いた顔していると今度は夏輝が問いかけてくる。
「ねぇ、パパ」
「ん?」
「また、逢える?」
「ああ、今までは逢えなかったけど、今日からはいつでも逢える」
「ママこと好き?」
「ん、俺は深琴も夏輝も大好きだ。―――愛してる」
「じゃぁ、ママと結婚する?」
「ちょっと時間かかるかもしれないけど、そうなれるように頑張る」
「僕、パパのこと応援してる!」
そう言うと、凄く嬉しそうにニコニコ笑っていた。