新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【深琴】
リビング。
家事を終えて、一息つこうとするといくつか並べてある写真立てが目に入る。
「本当にそっくりね、夏輝…」
夏輝の顔つきとふっとした仕草や、『星』が好きな所は嫌になるくらい父親譲りで切なくて愛おしい。
「…っ」
「…なに泣いてんだ?」
いつの間にか、夏輝の部屋にいるはずの夏彦がそこにいた。
「なんでもないわ。…夏輝は?」
「ぐっすり眠ってる」
「そう」
「深琴、ちゃんと話そう」
「…今さら、なにを話すって言うの?私たちの『関係』は終わったはずでしょ!」
「…4年前俺は『あの時』、…お前にプロポーズするつもりだった。正確には『待っててくれ』と言うつもりだった」
「結婚って…あなたのお父さまが許してくれるはずが…」
私がそう言うと、夏彦は呆れた顔をしてため息をついた。
「…お前を今回、『俺の秘書』に採用したのは親父自身だ」
「…嘘」
「…雪に『秘書』として候補に名を挙げるように頼んだそうだ」
そこまで聞くと、頭の中が混乱してその場に座り込んだ。
「深琴!?どうした?」
そんな私を見て、夏彦が駆け寄って来る。
―――ドクン。
お互いの距離の近さに胸が高鳴る。
「夏彦…。お父さまは私たちのこと…」
「ん、最初から親父は反対してない。…むしろ、深琴とやり直すチャンスをくれた」
「…じゃあ、なんで【小切手】を…」
「【小切手】?」
私は床から立ち上がり、ある引き出しから【5千万】と書かれている小切手を取り出して…4年前の香織さんとの『あの時』の事を話した。
「…これは親父の金じゃない。『婚約者』というのも香織が勝手にそう言ってるだけだ」
「…全部、私の勘違い?」
夏彦は震えた声を出す私に近づいて、自分の胸へ抱き寄せた。
「深琴、ごめん」
「どうして、夏彦が謝るの?」
「お前に『高田家(ウチ)』の事を話さなかったのは…御曹司とか関係ないただの“高田夏彦”として見て欲しかったんだ。―――愛して欲しかったんだ」
「それでも…もっと早く話して欲しかったわ」
「ごめん。これから隠し事はしない」
「夏輝のこと、ごめんなさい。黙って産んだりして…」
「それに関しても謝るのは俺のほうだ。夏輝を産んでくれてありがとう。…4年間、辛い思いをさせて悪かった」
「うんうん」と涙ぐみなから横に首を振った。
そっと、私の頬に手で触れて夏彦は優しく微笑む。
「…すぐに『結婚してくれ』とは言わない。ただ、深琴と夏輝の傍にいたい」
「夏彦、私の意見も聞かずに勝手に決めるなんて…あなたなんて『大嫌い』よ」
私がわざとそう言うと、なぜか夏彦はふっと笑った。
「『――でも、大好きな人』なんだろ?」
「…っ!夏輝に聞いたのね!?」
「フン。深琴の顔にそう書いてあっただけだ」
「…バカ」
そう言い合いながら、お互いの顔が近づいて唇を重ねた。
「んんっ…ふぁ…」
気持ちが通じ合ったせいか、会社でされたキスよりも心地いい。
「…深琴。今夜は大人しく帰ろうと思ったが、悪い…無理だ」
そう言うなら、夏彦の手が服に入って来る。
「あっ、ここじゃダメ…っ」
「じゃあ、お前の部屋なら?」
「いい…」
私がそう恥ずかしそうに呟くと、夏彦にお姫様抱っこをされて寝室に向かった。