新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【夏彦】
「深琴」
「なに?」
「お前の両親の墓参りに今度、俺も連れててくれ」
「もちろん、いいけど…知ってたんだ」
「ああ」
深琴の両親――“小日向朔輔(さくすけ)”と“小日向深耶(みや)”は、2年前の不幸な交通事故で他界した。
その後、深琴は『TAKADAホールディングス』に就職したらしい。
…そんな辛い時に、どうして俺は深琴の傍にいてやる事ができなかったんだろうか。
今さら、そう思っても過去はどうすることもできない。
「…お義父さんとお義母さんは、俺のことを許してくれないだろうな…」
「妊娠がわかった時、父さんに猛反対されたけど、母さんと朔也(さくや)は反対してなかった」
「お義母さんと朔也が……?」
”朔也”とは――深琴の2歳下の弟で、今は夏輝が通う保育園に勤めている。
「『俺が兄貴の分まで姉貴を支える』って言ってくれたのよ」
「…朔也にも逢って話さないとな」
「ママ、朔くんが来たよ」
保育園の制服姿の夏輝が俺たちのほうへ来て言う。
「わかった、今行く」
「深琴」
「大丈夫、まずは私から話すから。夏彦は先に会社に行って」
「わかった、なんかあったらすぐに言えよ」
「うん」
それから深琴が出て行って、しばらくしてから俺は車に乗り込んで会社に向かった。