新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【深琴】
マンションのエントランス出ると、黒髪でミディアム系の髪型した弟―――小日向朔也の姿があった。
「朔くん!おはよ」
夏輝は朔也を呼んで、いつもように抱き着く。
「おっと!おはよ、夏輝」
「夏輝、走ちゃダメでしょ!…おはよ、朔也」
「よう、姉貴。遅せえよ」
「ちょっと、バタバタしてて…」
「…ママ」
「なに?」
夏輝に裾を引っ張って、しゃがむと私に耳打ちする。
「パパのこと、朔くんに話す?」
「うん。話すけど…まだ他の人には言っちゃダメよ」
「うん!」
「…2人でなにをコソコソ話してるんだ?」
朔也は私たちを見る。
そして、私は再び立ち上がって覚悟を決めて口を開いた。
「朔也」
「ん?」
「…夏彦が帰って来たの」
私がそう言うと、朔也は目を張り詰めてこっちを真っ直ぐ見つめた。
「…っ、嘘だろ!?…だって、兄貴は姉貴を騙して…!」
「違う!夏彦は私を騙すつもりは…」
「じゃあ、【あの小切手】はなんだったんだよ!?」
「あれは、お義父さまのお金じゃなかったの。…詳しい事は夜に話すわ」
「…わかった。今日は早めに仕事を上がって夏輝と姉貴家(ち)に行く」
「うん、わかった」
「…よし、行くぞ。夏輝」
「いってきます。ママ」
「いってらっしゃい」
私は2人に手を振って、会社に向かった。