新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【夏彦】
会社。
【秘書課】とそれぞれの個室である副社長室と社長室は一体化したフロアにある。
社長室のドアノブに手をかけた所で雪が声をかけてきた。
「おはようございます。社長」
「おはよ」
軽く挨拶を済ますと、雪は俺の様子を見てなにかを察したようにニヤリと微笑む。
…やっぱり、こいつにはバレバレか。
「…雪、話がある」
「はい」
そう言って、俺たちは社長室に入る。
「…んで、昨日と同じネクタイって事はそう思っていいわけ?夏彦」
『秘書モード』ではなく『従兄弟モード』で会話をする。
「ああ、深琴とヨリが戻った。あいつの誕生日――9月6日に婚姻届を提出しようと思ってる」
ちなみに…
俺の誕生日は、10月11日
夏輝の誕生日は、8月10日
「俺と深琴の『関係』は正式に結婚するまでは、できるだけ秘密する」
「ん、そのほうがいいと思う」
俺と深琴の関係が、いきなり社員たちに知られたら良くない噂が流れるだろう。
…今度はなにがあったとしても、別れる気はないし…離れる気もない。
「それと、深琴が異動の件を受け入れてくれた」
「…ったく、昨日は険悪なムードでどうなるかと思ったけど…早くてビックリした」
「俺も『4年前の真実』を話して、深琴が素直に信じてくれるとは思わなかった」
そう言って、俺は苦笑いをした。
「…では、社長。数日中に辞令を出せるように手配します」
「ああ、頼む。…小野課長には俺のほうから話す。ここに呼べ」
「わかりました」
そう言って、雪は社長室を出て行った。