新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【深琴】
マンション。
―――ピンポ~ン♪
「俺が出る」
夏彦はそう言って、玄関に向かう。
「―――急に来てもらって悪いな」
「雪に聞いても『夏彦に直接聞け』って言うし…」
そんな会話をしながら、夏彦とダーク・ブラウン系でセミロング系の髪型をした香純がリビングに入って来た。
「香純」
「えっ、深琴!?…どうして夏彦のウチにいるのよ?」
香純がそう言うと、夏彦は私を自分の胸のほうへ抱き寄せて言う。
「ここが『俺たちの家』だからな」
「ちょっと、夏彦。離してよ…」
「なんだ、照れてんのか?なにを今さら…」
「違~うわよ!」
「――これは…どういう事かしら?説明してもらえる?」
「「…はい」」
『幼なじみ』の怒りがこもった声に私たちは、少し体を震わせた。
「…はい、コーヒー」
「ありがとう。深琴」
3人分のコーヒーを出し、私は夏彦の隣に座る。
「…んで、2人はいつから?」
「…大学の同級生だ」
「はぁ!?ちょっと待ちなさいよ!…じゃあ、あんたの『忘れられない彼女』って…」
「こいつのことだが…」
香純の問いに夏彦は、当たり前なような顔をして答えた。
「…通りで、夏輝が“誰かさん”にそっくりなわけね」
香純は「私の気のせいじゃなったのね」と小さく息を吐いた。
「…ごめんね。今まで黙ってて…」
「深琴が謝る事じゃないと思うけど…」
「香純、ありがとう」
香純はコーヒーに口をつけながら、そう言ってくれた。
「ねぇ、1つ聞いていい?」
今度は香純の視線が夏彦に向く。
「なんだ?」
「あんたたちが一度『別れた理由』に香織が絡んでる?」
「…っ!」
私はその“名前”を聞くと、なんとも言えない気持ちになる。
でも、今はその度に夏彦がそっと手を握ってくれる。
「もう二度となにがあっても、離さない」と言ってくれているように…。
「…ああ。でも、深琴を誤解させた俺が悪い」
「…夏彦」
そして、私たちは愛花と朔也に話をした時のように『4年前の話』を香純にもした。
話を終えると、香純が「そういう事か…」とため息ついた。
「…んで、これからどうする気?」
「誤解も解けたし、俺は深琴としか結婚する気はない」
「…いつするの?」
「籍は9月に入れる予定よ」
「そっかー。おめでとう♪」
「ありがとう」
私はそこまで言って、夏彦から聞いた話を思い出す。
「…ねぇ、香純と雪さんはいつ結婚するの?」
「な、なんで…深琴がその事を知ってるの!?」
「俺が話した。これで『秘密の社内恋愛同士』なにかあれば協力できるだろ?」
「夏彦。…言っとくけど、会社では必要以上に私に近づかないで!」
「お前は俺の『秘書』なんだから、それは無理だろ?」
「ほとんどにしてあげてくださいよ。社長」
「心配しなくても『時』は考える」
「…っ、『場所』も考えなさいよ!」
それを聞いて一瞬、秘書を引き受けた事を後悔してた。