新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
言えなかった事実
【一月】
深琴が【秘書課】へ異動して3か月。
「――小野課長、○○社から資料が届きました」
愛花が資料を差し出した。
「わかった」
そう言って、資料を受けて内容をチェックする。
「問題なさそうだ、これで進めてくれ」
「わかりました」
俺はふっと、時計を見た。
「…もう昼か。橘、ちょっと付き合え」
「はい」
俺は愛花を連れて、会社の社員食堂に向かった。
食堂。
「…あら?一月、愛花」
食堂に行くと、香純が俺たちに気づいて声をかけて来た。
「お前らも休憩か?」
「うん、…一月も愛花も一緒にどう?」
深琴がいつもと変わらず、俺に話しかけてくれる。
…どうやら、4か月前(4月)の『資料室での事』は気にしてないみたいだな。
深琴は俺のことを”男”としては見ていない。
「一月?」
「あんた、なにボ~っとしてのよ?」
「ああ、食券買って来る」
俺は食券を買い、深琴たちと4人で昼食を食べる。
「…んで、秘書課はどうだ?」
「うん、上手くやってるよ」
「本当に深琴が秘書課(ウチ)に来てくれて助かってるわ。…社長とも息がピッタリで…」
「…ちょっと、香純」
「へぇ~、それはよかったね~」
「愛花まで、やめてよ…」
香純と愛花はなぜか少しニヤついて、深琴は少し顔を赤くしているように見えた。
「…お前、なんで顔が赤くしてんだよ?」
「なんでもないわ。…私、先に戻―――」
深琴が立ち上がろうとすると、体をフラつかせて俺は慌ててその体を支える。
「おい、深琴。どうした!?」
「…大丈夫」
「やだ、熱があるじゃない」
「なんで、言わないのよ」
「早く、病院に…」
「…いや、待って。とりあえず社長室に運んで」
香純の言葉に「なんでだ?」と思ったが、今はそういう場合ではない。
「一月、なにしてるの!」
「一月、早く来なさい!」
「行くぞ、深琴」
深琴を抱きかかえて、愛花たちと社長室に向かった。
「…ごめんね、一月」