新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
社長室。
「一月、ここに深琴を…」
香純にそう言われて、深琴をソファーに下した。
「ダメだわ。2人共、出ないわ…」
誰かに電話する香純が、ため息混じりで言う。
愛花が体温計で熱を計ると【38.2℃】。
「もう、深琴ったら。なんで今日休まなかったの!?」
「…朝はこんなになるとは思わなくて…」
深琴が弱々しい声で言う。
…ったく、お前は無茶をする。
「…朝からこんなだったら、“あいつ”が深琴を仕事に来さすわけがないわね」
…“あいつ”?
「”彼”がダメなら、朔也は?」
「そうね、そのほうがいい」
「俺がかける」
愛花たちが言う“彼”が気になりつつも、俺は朔也の職場に電話かけた。
事情を簡単に説明すると、朔也に代わってもらえた。
「…もしもし、一月兄」
「朔也か、仕事中にすまない。実は深琴が…」
「えっ、熱!?」
「ああ、だから病院に…」
「…って、兄―――高田社長はいないのか?」
「お前、なんで社長のことを…」
「一月、代わって」
「ああ…」
香純にそう言われて、携帯を渡す。
「…もしもし、朔也?私」
…なぜ、朔也から高田社長の名前がとっさに出てくる?
面識があるのか?
いくら、深琴が『社長秘書』だからって…。
「…うん、だから悪いけど。…わかった、待ってる」
電話を終えて、俺に携帯か帰って来た。
「…朔也はなんて?」
「1時間以内には来るって。深琴は少しここで寝るといいわ」
「ありがとう、香純。…鞄に薬が入ってるから取って来てくれる?愛花」
「うん。ええっと…深琴の席は…」
「部屋を出て、目の前…」
「一月は仕事に戻っていいわよ。あとは私たちだけで大丈夫」
「…わかった。なんかあったら連絡しろ」
「うん、ありがとう。一月」
そう言って、俺は社長室を後にした。