新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~


【夏彦】
 

社長室。


―――ガチャ。

「…夏彦?」

ドアを開けると、深琴の声が聞こえてた。

「遅くなってごめん。商談がなかなか終わらなくて…」

そう言いながら、深琴の頬に手を当てる。

「うんうん、平気…」と深琴が横に首を横に振る。

「ママ~~」

夏輝がソファーから上半身を起こした深琴に抱き着いた。

「思ったよりも顔色はいいじゃん」

「ごめんね、朔也」

「謝るなよ…。でも、もう強がって倒れるなよ」

「そうだ、心臓に悪い」

「うっっ、ごめんなさい…」

俺たちの同意権に深琴は反省の色を見せた。

「よし、帰るか。…朔也、今日はウチに泊まって行け」

「ん、そのつもりで着替えは持って来た」

きっと朔也は、俺が深琴の看病と夏輝の面倒を見るのは1人じゃ大変だろうと思ってくれたんだろう。

よく気が利く義弟だ。

「助かる。…深琴、帰るぞ」

そう言って、俺は慣れた手つきで深琴をお姫様抱っこをして歩き出す。

「ちょ…夏彦、1人で歩けるから!」

「いいから、大人しくしてろ」

そう言い合いをしながら社長室を出ると、当然社員たちの目線が集まって来る。

――ザワザワ。

「…こんなはずじゃなかったのに…」

「『この人は私のモノです』って、アピールができていいだろ?」

「バカじゃないの、夏彦…」

深琴が顔を赤くしてそう呟いた。

< 39 / 90 >

この作品をシェア

pagetop