新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
雪と香純に「あとは頼む」と言って、しばらく廊下に出ると小野とその場で出くわした。
「あっ、いっくん!」
小野を見つけて、夏輝がタダタダッと走り寄ってゆく。
「よう、深琴を迎えるに来たのか?夏輝」
「うん、そうだよ!」
小野が頬を少し緩めて、夏輝の頭を優しくグシャクシャと撫でた。
「よう、一月兄。姉貴が迷惑をかけたな」
「いや、俺は深琴を運んでだけで…」
「…深琴を運んでくれたのは、やっぱりあなたでしたか」
「…っ!」
腕に抱きかかえている深琴と俺を見て、小野が顔色を変えた。
「どうして…高田社長が―――」
「…今は早くウチに帰ってこいつの看病をしなきゃいけないので、なにも言いません」
そう言って、俺たちはすれ違う。
「夏彦!下して!私が自分の口から言わ―――んんっ…」
最後まで言わせる前に、俺は深琴の唇を強く自分の唇で塞いだ。
「…うるさい、そんな事はわかってるよ。でも…今は黙ってろ」
「夏彦…」
「…っ!」
小野は背中を向けていて、俺たちを見てない。
でも、…もうわかっただろ?小野。
1度別れた事があったけど、昔も今も俺たちは一緒にいるんだ。
「パパ、待ってよ~」
夏輝と朔也が後ろから、俺たちの後を追って来る。
「…ったく、時々兄貴が『嫌なヤツ』に見えてくるよ」
「違うよ、朔くん!パパはママを愛してるんだ♪」
「ハハハァ。さすが、兄貴と姉貴の子だな。お前は!」
「だろ?」
「…恥ずかしくて、なんか熱がまた上がって来たわ」
「えっ、マジで!?」
「ヤベぇ~~!」
「ママ、大丈夫!?」
俺たちは少しやり過ぎた事を反省(?)しつつ、本来の目的を思い出して大急ぎで病院に向かった。