新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
「――今『可哀想』って言いました?」
「あら、小日向さん、いたんですか?」
「……」
社員たちは悪ぶれたように微笑む。
「…小日向さんって見かけに寄らず、最低なことをするのね」
「社長をたぶらかして、財産目当てで結婚するなんて」
「たまたま、社長と大学時代から知り合いだか知らないけど…あなたの息子の“父親”、本当は別の男の子じゃないの?」
そう言って、再び社員たちが笑う。
自分の体が震えるのがわかる。
…私たちのことは、好きに言ってくれても構わない。
『それ』は事実じゃないのだから。
でも…
『夏輝の“父親”は夏彦の子ではない』と否定されるのは、どうにも我慢できない。
「――息子は彼の子よ…」
声が震える。
「えっ…?」
「夏輝は紛れもなく、私と夏彦の子よ!」
そう私は声を上げた。
廊下にいる他の社員の目線が集まって来る。
「…っ!あなた―――!」
と、1人の社員が私に手を上げようとした。
「――お前、なにしてる?」
突然、別の低く声がして女の動きが止まる。
「小野課長、これは―――…」
「言い訳はいい。…深琴に手を上げたら俺が許さない」
一月は鋭い目線で、その女を睨んだ。
…一月。
「…っ!」
その後、一月に「ちょっと、来い!」と強引に腕を引っ張ってその場を後にした。