新社長と二度目の恋 ～御曹司は私も子どもも離さない～

資料室。


「ねぇ、一月。一月！痛いってば！」

資料室の入った所で、ようやく一月の強引に捕まれていた腕を振り解くことができた。

かと思うと、一月はなにも言わずに私の後ろから抱き着いてくる。

「…離してよ」

「……」

一月から離れようとするが、彼はそれを許さなかった。

「…俺じゃ、ダメか？」

「なにを言って…」

…ダメよ。

「俺の『気持ち』気づいてるんだろ？」

「…っ！」

それ以上は言わないで、お願い……。

じゃないと、私は一月を傷つける。

「…お前が好きだ、深琴」

一月が私へ向けている『感情』は気づいていた。

夏輝を『１人で産む』と決めた時もなにも聞かずに支えてくれた。

そんな当時、正直心が揺らいだ事もあった。

「一月となら“彼”を忘れられるかもしれない」―――と。

でも、すぐに夏彦への『想い』が溢れ出してきて無理だった。

「深琴」

名前を呼ばれて、振り返る。

「今ならまだ間に合う。社長―――あいつの傍にいたら傷つく。４年前のように、また八柳さんが現れたらどうするんだ？」

「…っ」

「…だから俺にしろよ。深琴も夏輝も俺が守るよ」

そう言って、一月に壁ドンされて強引に唇を塞がれた。

「やっ…んっ、やめて…っ」

必死に抵抗しようするが逃げられない。

…嫌！夏彦以外の男とキスなんて――！

「…っ！お前…」

私が涙を流している事に気づいて、一月は目を見開いた。

「…そんなに”あいつ”がいいのかよ？」

切なそうな声と傷ついたような顔。

「…ごめん…ひくっ…」

…ごめんね、一月。

「―――こんな所で、なにしてる？」

突然どこからか怒り混じる低い声がして、私たちが振り向くと夏彦がその場に立っていた。