新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
資料室。
中に入ると、普段誰もいない資料室に深琴と小野の姿かあった。
小野は深琴を後ろから抱き締めていた。
「…俺じゃ、ダメか?」
「なにを言って…」
「俺の『気持ち』気づいてるんだろ?」
「…っ!」
「…お前が好きだ、深琴」
「くっ…」
俺は今すぐ飛び出しそうになるのをグッと堪える。
「深琴」
名前を呼ばれて、深琴は振り返った。
「今ならまだ間に合う。社長―――あいつの傍にいたら傷つく。4年前のように、また八柳さんが現れたらどうするんだ?」
…小野の言う通りだ。
香織とは、1度逢ってちゃんと話さないといけない。
じゃないと、今後は深琴だけではなく…夏輝まで傷つけてしまうかもしれない。
「…っ」
「…だから俺にしろよ。深琴も夏輝も俺が守るよ」
そう言って、小野に壁ドンされた深琴は強引に唇を塞がれてキスされる。
「やっ…んっ、やめて…っ」
俺は我慢の限界に達して、一歩足を踏み出す。
その時だった―――
「…っ!お前…」
深琴が涙を流している事に気づいて、小野は目を見開いた。
「…そんなに”あいつ”がいいのかよ?」
小野の切なそうな声と傷ついたような顔。
「…ごめん…ひくっ…」
「―――こんな所で、なにしてる?」
深琴がそう言ったところで、俺は怒り混じった低い声を出して2人の前に姿を見せた。
「社長…っ!」
驚いた様子で俺を呼ぶ小野をスルーして、少し服が乱れて体を震わせている深琴の前に立つ。
「…なつ…」
「黙れ」
そう言うと同時に強引に抱き寄せ、小野の目の前で深琴の唇を塞ぐ。
「んんっ…夏彦…っ」
俺が舌を絡め合わせると、深琴の体の力が抜けて震えが止まった。
「…俺外のヤツにキスされてんじゃねぇよ」
「あれは…!」
「…わかってる」
そう言って、深琴の頭を自分の胸のほうへ抱き寄せて小野を睨んだ。
「…この先、なにがあっても俺は二度と深琴と夏輝を手離す気はない」
「…っ、深琴たちを苦しめてもか!?」
「――どんなに苦しくて傷ついても…私には夏彦じゃなきゃダメなの!だから、一月の気持ちには答えられない。…けど、ずっと『友達』でいたいと思ってる」
深琴は胸がいっぱいという顔をして、そう小野に言った。
「…そんな事、わかってる。…でも、しばらく1人にさせてくれ」
「…一月」
「…深琴、行こう」
小野を1人資料室に残して、俺は深琴手を引いてその場を後にした。