新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
課の全員が出社して、社長である夏彦と副社長である雪さんの後に続いて、黒髪でショット系の男が入って来た。
「みなさん、おはようございます。…すでに知っているかもしれませんが…」
「本日『TAKADAホールディングス』【秘書課】に配属されました。島田暁人です」
暁人はみんなに挨拶して、私と目が合うと笑顔を向けて来た。
それを見ていた私の両サイド並んでいる香純と七海が小声で言う。
「…暁人ったら、夏彦の横で深琴に微笑むなんて恐いもの知らずね…」
「みんなさんは気づいてないみたいですけど、夏彦さん…ずっと暁人先輩に鋭い目線を向けてますよね…?」
「もう帰りたい…」
私はこれから「こんな日々続くのか…」と思い、ため息をついた。
「…日向、小日向!」
「あっ…はい!」
夏彦の声でふっと我に返る。
「小日向さん、どうかしましたか?」
雪さんもそう言って、私を見た。
「なんでもないです。すみません…」
「…ならいい」
夏彦はため息をついた後、暁人に目線を向けた。
「島田…って、紹介はいらないな。あとは岡田に聞け」
「えっ、あの…高田社長」
「なんだ?」
「もしかして、知ってるんですか?俺たちが…」
「『幼なじみ』だろ?小日向から聞いたよ。…いろいろな」
「…えっ?」
「クククっ…」
「…雪」
夏彦の『深い意味』を含んだ言い回しに、その意味がわかる雪さんは笑い声を抑えきれてない。
「ごめん、…クククっ」
「もう社長と副社長は会議があるんですから、とっとと行ってください!」
「はいはい」
「じゃあ、あとはお願いします。岡田さん、小日向さん」
「「かしこまりました」」
雪さんと夏彦を送り出した後、暁人が言う。
「なんで、副社長は笑ってたんだ?深琴」
「…っ、さぁ~知らない。暁人、仕事の説明をするわ。香純」
「…こっちよ。深琴、手伝って」
私は無言で頷いて、歩き出す。
「―――深琴が“高田夏彦”の『第一秘書』ね。これは…『偶然』なのか?香織…」
…えっ?
暁人、今…。
暁人のその呟きは、私の耳には”香織”と呼ぶ声が一瞬…聞こえたような気がしただけだった。