新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
社長室。
私と夏彦はテーブルを挟んで、向き合うようにソファーに座る。
「…さっきの件なんだが、君に俺の『秘書』をしてもらいたい」
「なぜ、私なんですか?秘書なら雪さんが…」
「その雪は『次期副社長』なんだ。…現副社長―――叔父は本来俺の社長就任に合わせて、雪にその座を譲るつもりだった」
夏彦がそこまで言うと、私たちの横に立っていた雪さんが言葉を付け足(た)す。
「社長はこの4年間海外で経済について様々な勉強をして、日本に戻り詳しく会社の現状を伝えて…今の彼が信頼を寄せる者が『秘書』として必要です」
「それで、雪さんが秘書に?」
「はい、当面は私がやります。…そして、後任があなたです」
「なんで…」
「…俺が誰よりも信頼をしてるのは、お前だから…」
「…っ」
さっきの他人行儀の口調ではなく、久しぶりに聞く素の夏彦の喋り方に胸がドッキっとする。
「…申し訳ありませんが、お断り…」
「なぜだ?」
私が断ろうとすると、夏彦は少し険しい顔になった。
「雪、下がれ」
「はい」
夏彦にそう言われると、雪さんは軽く頭を下げて社長室を後にした。