新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
定時時間になり、少しずつみんなが「お疲れ様です」と挨拶を交わして課を後にしてゆく。
帰り支度をしていると、暁人が私・香純・七海に話しかけてきた。
「お疲れ」
「お疲れ様、暁人」
「お前、この後ヒマか?香純たちと夕食を食べて帰ろうって事になったんだけど…」
「私は…」
帰ってやらなくちゃいけない家事があるし、夏輝がいるので断ろうした。
その時―――
社長室のドアが開いて、中から夏彦が出て来た。
「深…小日向、まだいたのか?」
「お疲れ様です。社長」
夏彦が暁人を見て軽く「お疲れ」と言葉を返して、私にある書類を差し出す。
「今日の会議での変更をまとめといてくれ」
「わかりました」
「それと…」
夏彦は資料で私たちを暁人の視界から隠して小声で言う。
「…夕食を食べて帰るのはいいが、あんまり遅くなるよ。夏輝のことなら心配ない。俺も今日はもう帰るし…」
「いいの?わかった。なるべく早く帰るから…」
「ああ…」
「社長、深琴?どうかし―――」
暁人が私たちを不思議な顔をして見ている。
もう私たちの関係は会社でも公認で隠す必要はないが、やっぱり堂々とプライベートの話をするのもおかしな話である。
それに、暁人は私たちの関係を知った上でウチの会社に転職して来たのかと思ったけど…今の反応を見る限り、私にはそうとは思えなかった。
「悪い、なんでない。」
「じゃあ、お疲れ」と言って、夏彦は社長室に戻って行った。
「…んで、行くだろ?メシ」
「うん、行く」
それから、一月と愛花も誘って近くの店で他愛もない話をしながら食事をした。
まるで、高校時代に戻ったような懐かしい気分だった。