新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【夏彦】
数時間前――。
「お~い、夏彦」
駐車場の前でよく知っている声に呼び止められた。
「お前も今帰りか?雪」
「ん」
そう言いながら、俺の隣りに並んで歩く。
「今日、お前家(ち)に行っていい?…深琴さんも香純たちと『飲み会』だろ?」
「…んで、『香純がいないから、お前家(ち)でメシが食(く)いたい』と…」
「正解。さすが従兄弟(きょうだい)」
「…まぁ、お前のことだから『そんな事だろう』と思っただけだ」
「それ…酷くねぇ?」
「フン。そうだ、今夜は朔也も誘っていいか?」
「もちろん!…今夜は俺たちも『飲み会』だな♪」
「言っとくが、夏輝もいるんだからな…」
「わかってるって」
それから、車に乗って朔也にメールを送り雪と一緒に買い物をしてウチに帰った。
マンション。
玄関に入ると、いつもようにリビングのほうからバタバタと夏輝が俺のほうに駆け寄って来る。
「パパ、雪くん。お帰り~」
そう言って、夏輝が俺に抱き着く。
「ただいま」
「ほら、夏輝。お土産だ、エクレア」
夏輝はケーキ屋で買ったエクレアが入った袋を雪が差し出すと、満面の笑みを浮かべた。
「うわぁ~、ありがとう!雪くん」
「どういたしまして」
そんな会話をしながら、リビングに入ると夏輝の部屋から朔也が出て来た。
「あっ、お帰り。兄貴、雪さん」
「ああ」
そう言いながら、着替えにネクタイを緩めながら寝室に入ろうとする。
「兄貴。洗濯物が溜まってたから、夏輝を着替えさしたついでに洗濯機を回しておいた」
「そうか、いつも悪いな」
「なになに、朔也くん。このウチの家事よくやってるの?」
「ん、夏輝を送り届けたついでにね。夕食も食べて帰れるし」
「なるほど…」
「着替えてくる」
朔也と雪の話が落ち着いたところで、俺はそう言って寝室に入った。