新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~


20:30


「ん~…」

夕食も食べて雪たちにたくさん遊んでもらった、夏輝をふっと見ると…いつもよりも眠そうに目を擦っていた。

「夏輝、もう寝ろ」

「…やだ、ママに『お帰り』って言いたい」

「じゃあ、今夜は『おウチでプラネタリウム』は点けないなんだな?」

誕生日に買ったプラネタリウムのプロジェクターの話を出すと、夏輝は首を横に振った。

「じゃあ、今夜は俺と寝よっか!夏輝」

雪が椅子から立ち上がって、夏輝を抱き上げた。

「おい、雪」

「俺もプラネタリウムを観たいし。…たまには義兄弟でゆっくりしろ。それに『あの事』を朔也くんにまだ話していないだろ?」

「…?」

朔也が「なんの事?」と言った顔をして、俺を見る。

雪は俺にそう言い残すと、夏輝の部屋に入って行った。

…『あの事』とは、香織ことだ。

あいつが帰国すれば間違いなく、俺に逢いに来るだろう。

そして、香織が今でも俺の『婚約者』だと思っているなら…今度こそ結婚に踏み切ろうとするだろう。

もちろん、俺は今週やっと婚姻届を提出して深琴と籍を入れられる。

それが先か後なるかわからないが、それを香織が知れば4年前のように深琴に敵意を向けて来るだろう。

今度は、朔也と夏輝にも…。


「兄貴?」

「…近々、香織が帰国するそうだ」

「……」

「ちゃんと俺から香織に話をする。…お前にも迷惑をかけるかもしれない。でも、なにがあろうと2人を守る」

「…なら、俺から言う事ないよ。第一、バカみたいにお互いを4年間も想い続けた兄貴と姉貴がまた離れるなんて想像もつかないし」

「バカとはなんだ、バカとは…」

俺と朔也はお互いに苦笑いをした。

その後、すぐ俺の携帯が鳴った。

―――【着信:小日向深琴】

「姉貴から?」

「ああ」

そう答えて、電話に出た。

「もしもし…深琴?」

「あっ、夏彦。…今から帰るから」

「…じゃあ、迎えに行く。香純に雪を引き渡したいから一緒に待ってろ」

「うん、わかった」

そう言って、電話を切った。

「…最初から迎えに行くつもりだったんだろ?兄貴、酒を飲んでないし」

「もし、深琴が酒を飲むなら迎えに行こうと思ってたんだよ。帰って来たら、俺も少し飲むから少しつき合え」

「ん、じゃあ…もう少しつまみを作とく」

「ああ、頼んだ」

キッチンに向かう朔也にそう言って、ウチを出た。


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