新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【暁人】
深琴たちと別れた後、俺は駐車場に停めてある自分の車に乗り込んだ。
「なんだか、今日は香織が来たから疲れたな…」
ため息をつきながら、携帯を操作していと着信音が鳴って―――【着信:八柳香織】と表示された。
「…なに?」
今は香織とあんまり話したくないため、冷たい声を出した。
「いったい、どういう事!?暁人。『TAKADAホールディングス』に転職しなんて聞いてないわよ!」
どうやったら、昼間あの場に俺がいた事は気がついていたらしい。
「お前には関係ないだろ?」
「関係ないわけではないでしょ!?だって―――…」
その先の言葉は聞こえてこなかった。
その代わり、なにかを誤魔化すように香織は話題をすり替えた。
「夏彦と“あの女”のことなんだけど…」
「…おい、俺の『親友』を“あの女”呼ばわりするな!」
本当に『この話』には、うんざりする。
「ちょっと、待って。あなたと深琴さんが『親友』!?」
それを言った瞬間、明らかに動揺している香織の声が聞こえてくる。
「深琴は高校時代の同級生だ。…なぁ、香織」
「なに?」
「俺がどんな思いで『この関係』を続けて来たか、わかるか?…お前はどんな思いで『この関係』を続けて来たんだ?」
「…っ、それは…――― 」
「俺は香織が好きだから、お前の『嘘』に罪悪感を抱きながら付き合って来た。でも、もう…うんざりだ」
…これは、本心だ。
だからこそ、香織が俺をどう思ってるか『本当の気持ち』が知りたい。
「暁人、私は―――」
「これ以上、勝手な『嘘』で夏彦と深琴の邪魔をするな!」
「…っ、嫌よ!」
「そうか、わかった。それが、俺に対する『答え』なんだな…」
「ちが――――っ!」
俺は香織が再び、なにかを言う前に電話を切った。