新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~


【夏彦】


深琴が社長室出て行った後、俺はため息をつきながら社長椅子に腰を落とした。

…やっぱり、ダメか…。

たとえ、4年前の『真実』を話しても今の深琴の態度を見る限り…俺の話を素直に信じてくれないだろう。

「…深琴…」

彼女の名前を呟いて目を閉じた。



4年前。


はっきりと深琴との別れの理由もわからないまま、俺はニューヨークに発った。

携帯が鳴り―――【着信:高田夏也】と表示される。

「おお、夏彦。無事に着いたか?」

「ん、今部屋に着いた」

「そうか、しっかりと いろいろ学んで来い」

「わかってる。なぁ、親父…」

「ん、どうした?」

「俺に黙って、深琴に逢ってないだろうな?」

「”深琴”?…ああ、お前が『いつか紹介したい』と言っていた彼女のことか?」

「ああ…、実は―――」

親父に深琴に一方的に別れを告げられた時の事を話すと、「考え過ぎかもしれんが、もしかして…」と電話口を通して言葉を零す。

「香織ちゃんが…深琴さんにお前と別れるように強要したのかもしれない。深琴さんは香織ちゃんのことを『婚約者』と言ってたんだろ?」

「確かにそうだ、でも『婚約』の話は―――」

「ああ…、お前たちが小さい頃に冗談まじりでその場で話したたけだ。俺も駆(かける)も本気じゃなかった」

"駆"とは―――香織の親父さんで、俺の親父の高校時代からの親友らしい。

「でも、香織は…」

「…本気にしてたんだろうな」

「……」

…香織が幼い頃から俺に『好意』を寄せているのはわかっていた。

でも、告白してくる素振りもなかったし、『そのうち、他に好きなヤツでもできるだろう』と高を括っていた。

「…すまない、夏彦。俺がお前には『本気で付き合ってる”彼女”がいるらしい』と香織ちゃんに話してしまったんだ」

「そういう事か…」

申し訳なさそうに言う親父に納得する。

「…んで、どうする?」

「…今はどうする事もできない」

今、誤解を解いてもあいつの傍にいてやることはできない。

なら、帰国してからにしよう。

…もし、その時お前が1人なら…。

心の中でそう決意して、親父との電話を切った。


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