新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
覚悟を決めて「父さん」と口を開いた。
「なんだ?」
「…『お見合い』はできません。私は親が決めた『政略結婚』なんて御免だわ!」
「うるさい!自分勝手もいい加減にしろ!」
父さんはその場を立ち上がり、私に近づいて強引に腕を掴まれて無理にその場に立たされた。
「痛っ!…離してってばっ!」
必死に手を振り解こうと抵抗する。
「社長、少し落ち着いてください!」
「八柳おじさん!」
「香織さん、大丈夫?」
暁人は私を父さんから、守ろうと自分のほうへ抱き寄せ、夏彦は私たちと父さんの間に入り、深琴さんも私の隣に来て心配してくれている。
「これは…自分勝手じゃない!」
「…じゃあ、夏彦以外に好きな男でもいるって言うのか!?」
「―――ええ、いるわ」
父さんの目を見て、はっきりとそう答えた。
「なに…!?どこにそんな男が―――…」
「…ここに、いるわ」
そう言って、私は暁人のネクタイを引っ張って顔を近づけて少し強引に唇を塞いだ。
「「「……っ!!!」」」
父さんと夏彦・深琴さんと、私に急に唇を塞がれてキスをされた暁人は…おそらく一瞬なにが起きたのか、わかっていなかっただろう。
私は「…お前、なにをしてっ…」と驚いて呟いている暁人に、今まで言えなかった想いを心に込めて伝える。
「…今まで長い間、私の『嘘』で苦しめてきてごめんなさい。すぐに許してもらえるなんて思ってない。けど…私はあなたが大好きよ。暁人」
「香織、お前は…やっぱり自分勝手過ぎだ。…っ」
暁人は苦笑をしながら、そう言って私を強く抱き締めた。
「それとね、暁人。来年の4月にはあなたも“パパ”になるのよ♪」
暁人の手をとって、自分のお腹にあてさせた。
面を食らって驚いている彼に代わって、深琴さんが言う。
「本当に!?香織さん!おめでとう!」
「ええ、…それとお願いがあるんだけど…」
「なに?」
「あなたのこと、これからは“深琴”って呼んでいいかしら?」
「もちろんよ、嬉しいわ。“香織”」
深琴と初めて微笑み合って、それを見ていた夏彦も安心したように遅れて「おめでとう」と私と暁人を祝福してくれた。