新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
昼休み。
つわりの事も考えて、今日からお弁当を持参した。
私・香純・暁人か席に着いたと思ったら。一月と愛花も食堂来たので誘って一緒に食べる。
「そうえば、まだ言えてなかったけど…誕生日と結婚おめでとう!社長夫人様」
そう言って、愛花は微笑んだ。
「…っ、愛花まで彰さんと同じような事を言う」
「やっぱり、彰に言われたんだ~」
愛花が「予想通り」と笑う。
「…まぁ、それは事実だしな。…慣れるしかないだろ」
一月が言う。
…本当にその通りなんだよね。
「大丈夫、私も一緒だから」
「えっ。どういう事?香純」
「―――昨日、雪(あいつ)にプロポーズされたんだろ?香純」
香純が私の問いに答える前に、後ろから夏彦の声がしてそう言いながらお弁当から1つ卵焼きを取ってそのまま食べた。
食堂にいる社員たちは、夏彦―――社長の登場にザワつく。
「ちょっと、取らないでよ!自分のお弁当あるでしょ!」
「別にいいだろ。…つわりは?食べられるか?深琴」
「…大丈夫よ、心配し過ぎ。夏彦」
「…相当浮かれるわね。夏彦」
呆れた様子で香純が言うと、一月と暁人もそれに同意して頷いた。
「昼休みくらい、いいだろ?…雪なんてもう結婚の式場を探してるぞ」
「あんたたちの結婚式が終わってから…と思ってたのに」
私と夏彦は、3か月後の――12月25日に予定だ。
「ええ~、ついに!?おめでとう!香純」
「うわ~、おめでとう。香純」
私と愛花は心の底から嬉しくなり、香純と軽く抱擁(ほうよう)をした。
雪さんと香純の『関係』は別に隠しているわけでもないが、正式にはまだ公表してない。
【秘書課】の社員たち全員は2人の『関係』について知っているが、それ以外の課の社員たちはおそらく気づいてない人もいるし…勘づいている人もいるだろう。
「ありがとう、深琴、愛花」
香純も嬉しそうに微笑んだ、
その左手薬指は、婚約指輪(エンゲージリング)が静かに輝いていた。
「“社長夫人”と“副社長夫人”ね。…俺なんか、急に奥さんと子どもができて、あれからパニックで頭がついていけない」
暁人はそう言って、ため息をついて頭を抱える。
「ゴホッ、はぁ!?暁人。今、なんて…」
「どういう事!?暁人。ゴホッ…」
それを聞いて一月と愛花が、驚きながら咳き込んだ。
あの時の出来事を一月と愛花に大まかに説明した後、夏彦が「ああ、そうだ」と言って暁人を呼んだ。
「昼から深琴について一緒に仕事をしてくれ。つまり、お前が俺の『第二秘書』だ。島田。…人事課にはもう伝えてある」
「…話が急過ぎますよ、社長」
「そうよ。深琴の産休とかいろいろあるのはわかるけど、先に『課長』の私に話を通しなさいよ!バカ社長」
私も心の中で香純に同意した。
「香純、『社長』って呼んでるのに口調が『プライベートモード』になってるぞ。それにバカとはなんだ、バカとは…」
「知りません!…さっさと社長もお昼を食べてきたらどうですか?」
「はいはい。…岡田、急な話なんだが…やっとこの前退職した大浦(おおうら)さんの後任が見つかった。確認をしといてくれ」
夏彦はそう言って、香純にバインダー型の薄いファイルを差し出した後、私の髪にキスを落として再び周りがザワつく中…平然と食堂を去って行った。
…もうっ、堂々とし過ぎ!
どこかの王子か!?
恥ずかしい…。
香純は「いつもの事ね」と呟いき、さっきの薄いファイルを開く。
「えっ、嘘…」
「香純?」
「ちょっと、これ見て!」
そう言われて、私と愛花・暁人と一月はファイルの中に目を通した。
それは、【八柳香織】もとい―――【島田香織】の履歴書だった。