新社長と二度目の恋 ~御曹司は私も子どもも離さない~
【香織】
――遡る事、数日前。
夏彦の家での一件の後、その足で実家に向かった。
車内の中は運転手さん・父さん。後部座席に暁人私。
移動中、車内は誰も口を開く事もなく重い空気が流れた。
ウチに着き、リビングに入ると、母―――八柳小春(こはる)が私に近づいてなにも言わずに頬を叩いた。
―――バシン。
「香織、あなた4年前も今回の事もどんだけ周りが振り回されたと思ってるの!?」
「…ごめんなさい」
暁人は「大丈夫か?」と私の顔を覗き込みながら、少しよろめいた体を軽く支えてくれた
「このくらい、平気…」
「小春、少し落ち着け。話しながらリビングで…2人共、中に入りない」
「「…はい」」
父さんは母さんを落ち着かせながらリビングに入って行く。
その後を追いかけるように私たちも中に入った。
それから、『夏彦と深琴の件ついて』母さんにも泣きながら父さんと同じような事を言われた。
「…父さん、母さん。『夏彦と深琴の件ついて』は2人も不愉快な思いをさせてごめんなさい」
「……」
「香織、これからどうするの?」
母さんは、不安な顔して私の返事を待つ。
「…私は『八柳家(ウチ)』を出るわ。『今後一切実家からお金の支援はしない』と言われたわ」
その言葉に母さんはハッとした顔をして父さんを見た。
「…香織は、大学時代から“付き合っている男”の間に子どもを妊娠してる」
「えっ…、香織。本当なの?」
「…うん、だから、急いでに日本に帰って来たの」
…夏彦の本当の気持ちの確認、私自身の本当の気持ちの確認のために…。
「“付き合っている男(ひと)”って…」
その言葉に暁人は、私と目線を合わせた。
私は少し微笑んで無言で頷くと、暁人が父さんと母さんに向けて口を開いた。
「八柳社長――いいえ、お義父さんには先ほどお伝えしましたが、改めてご挨拶します。香織さんとお付き合いをしています。島田暁人です」
と言って、暁人が頭を下げた。
一瞬、驚いた顔をしたものの…すぐに母さんがなにか腑に落ちたように「…やっぱり。そうだったのね」と呟いた。
「もしかして、私たちの『関係』に気づいてたの!?」
「ええ、なんとなくね。香織が一時帰国するたびに必ず1日は『友だちのウチに泊まる』って言って、外泊するし…『お揃いのブレスレット』もつけてるんだものの」
それを聞いて、私たちの顔は多分赤くなってる。
「小春、2人ことを勘づいていたなら…俺にも…」
私たちの『関係』をさっきまで知らなかった、父さんがすぐに悔しそうに言う。
「確信はなかったから…。大学の時、夏彦くんと暁人くんとの間で悩んでたでしょ?」
…私が悩んでるの、気づいてくれたんだ。
「…『夏彦くんと深琴さんの件ついて』で、あなたは最低な事をした。暁人くんも苦しんだ」
「……」
「―――それでも、香織でいいのね?暁人くん」
「はい、後悔しません。お義母さん」
真剣な面持ちで、暁人は母さんにそう答えた。
そして、翌日。
暁人の実家『島田家』に挨拶に向かった。
事情を話すこと、お義父さんとお義母さん・暁人の2歳下の弟―――“島田千里(せんり)”くんにも凄く驚かれた。
けど、最後には「孫が待ち遠しい~!」と言われて結婚を許された。
その帰りに【婚姻届】を提出し、私は“島田香織”になった。
夏彦から「ウチの会社で働かないか?」と誘いを受けたのは、電話で無事に入籍した事を伝えた時だった。