【完結】私に甘い眼鏡くん
波乱万丈修学旅行
修学旅行当日の朝、始発の電車に乗って学校の最寄駅に向かった。
まだ眠たげななっちゃんと太一が電車に乗ってくる。
「おはよ」
「おはよ~」
「まじ眠すぎ‥‥‥」
二人ともどうやら寝不足らしい。
「昨日楽しみで全然眠れなくてさ」
「小学生か?」
「奈月に電話したらこいつも起きてんの」
「だって楽しみだったんだもん!」
似た者同士だった。本当に仲がいい。
「んでそのままオンラインゲームしてたら朝が来ちまった」
「え、オール?」
「んー一時間は寝たよね?」
「ああ。でも空港までのバスも長いし、飛行機も長いし、眠気なんて‥‥‥大丈夫‥‥‥」
言いながらすやすや寝落ちした太一を見て、私たちは苦笑する。
「仲良しだなあ二人は」
「あ、嫉妬しちゃった? 彩は私のこと大好きだもんね」
若干深夜テンションを引きずっているなっちゃんを軽く流した。
そういうことにしておいてやろう。
「彩、結局東雲と微妙なままでしょ。私たちに任せて!」
「え?」
横を向くと、なっちゃんも寝落ちしていた。
肩に頭が乗せられ、非常に重い。
なっちゃんを反対方向に押しやって、太一の肩に寄りかける。
あとでネタにしようと、仲睦まじい二人の様子を写真に収めた。
幸いこの車両は私たちだけだった。
次の駅で偶然にも夕くんが乗ってきた。
一瞬目が合った。
思い切って「おはよう!」と声をかける。
「おはよう」
そのまますたすたと歩いてきて、私の隣に座った。
少しだけ、身体が緊張したのが分かる。
「その、乗って一駅で寝ている人たちは?」
「楽しみで眠れないまま二人でオンラインゲームしてたら朝になったって」
「今回はさすがに馬鹿としか言いようがないな‥‥‥」
私もそう思う。強く首を縦に振った。
沈黙。
電車のゴトゴトという音だけが響いている。
そのまま最寄駅について寝ぼけまなこの二人を起こす。
しかしあろうことか、彼らはバスに乗り込むと二人で隣に座ったまま寝てしまった。
寝ぼけるのも大概にしてほしい。
しかしどこもグループは固まって座っているので、二人と同じ列に私たちは座ることにした。
「窓側と通路側、どっちがいい?」
「私は特に希望ないよ」
「じゃあ俺酔いやすいから窓側で」
それきり、終始無言だった。
担任の朝の挨拶とこの後はよく寝て午後に備えるように、という忠告を聞くと、私も眠くなってきた。
ここのところ眠りが浅かったからかもしれない。
窓の外を見る彼の横顔を見ながら、私は意識を手放した。