Magic Love Sea〜俺がお前のこと、攫ってやるよ〜

「ギールヴェン国を目指す！！西に進路を変えろ！！」

「わかりました！！」

頰を赤くするディートフリートに、ラナとオーウェンがからかうように肩を叩く。ディートフリートはようやくミラに会うということにギールヴェン国に着くことを心待ちにした。



ギールヴェン国の港街にある大きなお屋敷では、名家バートレット家のお嬢様であるミラがため息をついていた。

「ミラ様、もうすぐヘンリー様がご到着されます。笑顔を忘れないように」

メイドたちがそう言い、「わかってるわよ」とミラは作り笑いの練習をする。しかしすぐに作り笑いは崩れ、ため息が出てしまうのだ。

ミラは、来月に海軍のトップに立つヘンリー・フランツと結婚することが決まっている。バートレット家とフランツ家の結び付きを強めるための言わば政略結婚だ。ミラは突然父に言われ、今日も無理やりヘンリーと会うことになっている。

「デートっていう雰囲気じゃないわね……」

ミラは水色のレースのついたドレスを見つめる。お屋敷の空気やメイクが重く、まるでお見合いのようだ。