Magic Love Sea〜俺がお前のこと、攫ってやるよ〜
「旦那様から言われたので……」

メイドたちはそう言い、ヘンリーを迎えるための準備をし始める。ミラはソファに座り込み、ため息をついた。

重苦しい空気の中、いつもミラが頭に浮かべるのは遠い海に旅立ってしまったディートフリートのことだった。彼の魔法のようなマジックは今でもミラの心に鮮明に残っている。

「ディート、今どこで何してるんだろう……」

ヘンリーは政略結婚の相手にも優しく接してくれる。しかし、その笑顔にミラは何か引っかかることがあった。何かを隠しているとミラは直感した。

「ディートに会いたいな……」

何かを隠した笑顔より、太陽のような力強いあの笑顔が見たい……。そうミラは心から思う。大きくなったディートフリートはたくましくなっているのだろう。

「ヘンリー様がお見えになりました」

メイドの言葉にミラは表情を暗くした。



海賊メシアの船は順調に航海を続け、一週間ほどかけてギールヴェン国に到着した。懐かしい街がディートフリートの前に現れる。

「ミラがあそこにいるんだな……」
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