【短】ペシミスティックな欲望
とさっ


彼女の持っていたカバンが足元に落ちた音で、はっと我に返った。


俺は、なんて言っていいのか分からず彼女から視線を外す。


すると、彼女は小さな声で…。


「止めないで…」


と、胸に身を寄せて来た。
その肩が震えているのを、今度こそ見てみぬフリは出来ずに、ぽんぽんと落ち着かせるように撫でた。


「花生さん…これ以上は…」

「相手なんかいないから、私なら大丈夫…だから…」

「けど…」


俺のその次の言葉は、口からこぼれることはなかった。
彼女からのたどたどしい接吻けで塞がれてしまったから。



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