【短】ペシミスティックな欲望
アイ、じゃない…。

アイ、なんかじゃない…。


そう思おうとしたところで、この想いは体中を逆流するように燃え盛った。


彼女からの接吻けで大人気もなく、理性の蓋が開いてしまった俺は、四角く仄暗いホテルの一室に、なだれ込むように彼女を連れて…。


何度も何度も…むせび泣く彼女の頬に接吻けて、それでも足らないから全てを分け与えて欲しいと、懇願してはまた接吻けた。


細くしなやかな指が、俺の背中に何回も新しい傷を付けていく。


それさえも、愛おしく…。
こんなにも人を好きになることは厳しく心の底から苦しいのかと、そう感じた。


「矢代さ…ん」

「麻耶ちゃん…ごめん…」


別に割り切ってしまえばいいと思った。
けれど、彼女の言った「大丈夫」はけして、本音ではないから…。

それが、嫌でも分かるから…。



俺は、一言だけ彼女にそう、囁いて…上半身だけ起き上がった状態で、彼女を抱き締めた。





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