【短】ペシミスティックな欲望


『大人になってからの麻疹(恋)は質が悪い』


そう、遼太が笑って言っていたことを思い出す。

今、それを自分でも実感してた。
それでも諦めの悪い俺は、呟くように彼女を誘う。



「折角だから、お茶でも…と思ったけど。なんか無理そうだね」


苦笑いを浮かべる俺。
それを見て、一瞬何を言われているのか理解出来なかった彼女は、すぐにきゅっと左の薬指を握り隠してから、首をふるふると振ってきた。


「だ、いじょうぶ…です」


その声が少し震えていたことに、気づかないフリをして、俺は近くのカフェへ彼女をエスコートする。


「いつから?」

「…え?」

「いつから俺のことを?」


かつんかつん
こつんこつん

歩調を合わせて歩く姿を、他の人間が見たら…恋人同士だと思うかもしれない。


それが堪らなく気持ちを高揚させて、鼻歌でも歌いたくなった。


「…から…」

「…ん?」

「3ヶ月くらい前…矢代さんが女の人に叩かれてて…」

「…うわー…アレ、見てたの?最悪だわー…」


俺は、こめかみに手をやった。





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