【短】ペシミスティックな欲望
彼女の言う通り、3ヶ月くらい前まで…俺は3つ年下の実紀(みのり)という女性と付き合っていた。

と言っても、とてもドライな関係で、お互いのパーソナルスペースには入り込ませない、そういう暗黙のルールが存在していた。

けれど、実紀の周囲に"婚期"という言葉がチラついてきた頃から、その関係が徐々に壊れ掛けてきていた。


「ね、大智…?あたし達いつ結婚するの?」


ストレートにそう言われた時には、実紀には申し訳ないけれどもう潮時だと思った。


元々、遼太の主催した合コンの数合わせという、どうでもいい理由で参加した時に、同じ立場で来ていた実紀。


必然的に、ほんの酔いに任せてその場から抜け出し、二次会という快楽の海に身を任せた。


そこから、週に1、2度会うようになり…気付けば遼太に付き合っていると広言される関係になっていた。


けれど、別に其処に熱量のある愛はなかった。
特別心揺さぶられる感情も生まれなかった。


酷い大人。
酷い男。



あの日、頬が腫れるくらいの勢いで叩かれた時に、実紀から食らった言葉通りだった。


俺は、人を好きになる感情というものがとても鈍く取り付けられているようで…。


遼太に「お前、実はゲイ?」なんて真面目に聞かれたことがあるくらいだ。


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