おはよう、神様。
あれから1年がたち、
私が通う学校、星ヶ丘学校では毎年、「命の作文」と題し、
3年生の生徒から先生が代表者を1人選び、
自殺を志願する方に向けて命の大切さを問う会が行われている。

どうせ優等生を選んで、綺麗事を並べた作文を読ませて
学校の評価を上げる。
私には関係ないし、なんて思えていたのは3日前までのこと。

しかし、私が今いるのはステージの上。
手には2日前に書き上げ、添削をし、先生に承認を得た原稿がある。

ははは、なんてたってこんなところに私はいるんだ。

先生が指名した生徒。
それが私。遠山紗季だった。

とはいえ、いくら文句を言おうが、指名されたものは仕方が無いので
インターネットで調べたら出てくる綺麗事を自分の言葉に変えて繋ぎ合わせ、
それっぽく仕上げるといかにも優等生が書き上げたかのような立派な原稿になる。

あとはこれを淡々と読むだけ。
こんなものは早く終わらせるに限る。

それに私は、生きてなんて言える立場ではない。

「命の作文。発表は遠山紗季さんです。」

「はい。」

マイクの前に立ち、原稿を広げる。
あとは、読むだけ。読むだけなのに。

ー命とは大切にしなければなりません。

読めなかった。

グシャッ。
静かな体育館に響く紙を握る音。
異変を感じとった生徒のざわめく声。

それでも、それを聞いてもなお。
頭に浮かんだ言葉は消えてくれず、気づいたら口に出していた。

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