痛み無しには息ていけない

~零~

気付いたら、壁を殴り続けていた。
両拳はとうの昔に痣だらけになっている。
痛いなんて、言ってられなかった。
口から言葉が零れ落ちている。


「感情が無ければ、誰も好きにならなければ」

「こんなに苦しむ事は無かった」

「アイツが花奏を好きにならなければ」

「花奏はまだこの世に生きてた!」

「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


叫びながら壁を殴り続ける。
手の甲の皮膚が破れ、血管が切れ、血が滲んでいる。
もはや痛みは感じていなかった。


「あの想いさえ無ければ……気持ち悪い」


バキッと、嫌な音がした。
手の甲から流れる血が、そのまま床に落下する。
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