痛み無しには息ていけない
VII

~零~

いつだったかの自分が、裁判所で傍聴している。
――よく“一般人の裁判傍聴”とかあるけど、正直言うとこんな形での傍聴は経験したくなかった。

被告が「誰でも良かった」と言っているのを、死んだ魚のような眼で観ている。
どの発言者も、どの言葉も音も、一つの風景として捉えてるようだった。


「誰でも良いなんて嘘だろ。現にあの事故、テメェの元カノだった花奏だけが亡くなったじゃねーか」

「どうしてそこまで、花奏に依存してたんだ。。」

「結果として命を奪って、そこまで花奏を束縛して」

「本当に相手のコトが大切なら、相手の幸せを願えないのか。真逆じゃねーか」


死んだ魚のような眼で被告を観ている。
瞬きもしない麻琴の目から、涙が一筋零れる。


「拘束すんな。想いすぎんな。気持ち悪い」
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