アテナ・イェーガー〜真実、のちにキス〜

柵越しに触れた唇

「ううっ……」

ロネが目を覚ますと、そこにあったのは意識を失った森ではなかった。暗く重苦しい空気の牢屋だ。

「えっ！？ここは……」

ロネはボロボロのベッドに寝かされていた。窓はあるものの、鉄格子が嵌められている。そこから見える景色はロネの見たことのないものだった。

「アテナ……アテナ！」

ロネの頭にすぐアテナの顔が浮かんだ。牢屋の分厚いドアに手をかけるが当然鍵がかけられている。杖は奪われてしまったので魔法は使えない。

「一体どうしたら……」

アテナはどうなったのか、自分がなぜこんなところに閉じ込められているのか、ナタリーやネイサンは無事なのか、様々な疑問や心配がロネの中で渦巻く。その時、コツコツと足音が聞こえた。一人のものではない。二人だ。

「気がついたか。たかが首を絞めただけで何時間も気絶するなんてな……」

冷たい目をしたユミルがロネを柵越しに見つめる。その後ろには暗い目をしたアテナがいた。ナタリーの用意してくれたものではなく、戦場にいる兵士のような鎧を身につけている。