【修正版】クールで無表情な同期が十年間恋情を患っていた理由

片思いならこの場で奪うのが鉄則なのに。

長年の自分の想いが否定されたな気がして、思わず反論していた。

好きなものは好き。彼女だって、僕だって。

君が欲しいけど…悲しませたくないのも事実で。

夜空の映り込む彼女の美しい瞳には、みるみる涙の膜が張りはじめた。

じっと見つめて、涙があふれるのを待つ。

今は…今だけは、拭えるのは僕だけだから。

「……頑張ってる…なんて初めて言われた。」

ぽろり。ぽろり。

そっと手を伸ばしかけて……怖くなって思い留まる。
< 29 / 61 >

この作品をシェア

pagetop