砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
家に帰って来て、靴を脱ぐとお母さんが、玄関に迎えに来てくれた。

「ただいま。」

「おかえり。」

挨拶を交わしても、お母さんはしばらく玄関にいる。

「お母さん。もう私が帰って来た時、出迎えに来なくてもいいよ。お母さんも忙しいでしょ。」

するとお母さんは、作り笑いをしていた。

それが私の胸に引っかかった。

「何か、あるの?」

「いやね。あなたが荷物を持って、彼氏の元へ行くって言った時の事、忘れられなくてね。また同じ事を言いだすんじゃないかって。」

「もう、そんな事言わないよ。」

「あら、今度の人はそんな人じゃないの?」

「いないよ、そんな人。」

人知れず、お母さんを心配させたあの時の事を、後悔していた。

もっと違う方法で、お母さんに伝える事ができたのかも。

「お母さん。私には、別れた彼しかいないの。」

「……そう。」

私は笑って見せたけれど、それはお母さんに届いていたのかな。
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