砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「チナ……呼びに行こうとしたけれど、間に合わなかったって。」

「そんな……」

私は男の子の亡骸の側で、泣いてしまった。

どうして。どうして昨晩、この男の子に付いてあげなかったのだろう。

後悔ばかりが身体を駆け巡る。

「チナ。バスの時間だ。男の子を乗せて、母親の元へ返そう。」

「うん。」

病院から毛布を借りて、男の子をくるみ、バスへ乗せた。

本当だったら、生きてこのバスに乗るはずだった。

バスの乗っている1時間は、気が遠く、ずっと同じ景色が続く道に、鬱陶しさまで感じた。


やがてバスがサハルに着き、私は男の子を連れて、バスを降りた。

「おはよう、千奈ちゃん。」

津田先生が、男の子を私から掬い取った。

「あれ?」

その男の子を見た津田先生は、悲しい顔をした。
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