砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
先生は分かったのだ。

男の子の命が尽きた事を。

「……津田先生、男の子の母親は?」

「ああ、あそこにいるよ。」

母親は、朝一番で男の子を迎えに来たと言う。

津田先生は母親の腕に、男の子をそっと降ろした。

「お子さん、昨日の夜更けに亡くなりました。残念です。」

通訳のアリさんを介して伝えたら、母親は男の子の亡骸にすがって泣きじゃくった。

そう言えば、男の子の名前も聞いていなかった。

「お母さん、この子の名前は?」

「アムジャド……」

「えっ?」

「アムジャド皇太子と同じ名前を付けたんだって。」

アリさんが、教えてくれた。

また涙が出てきた。

アムジャド君のご両親は、どんな思いでこの子に”アムジャド”の名前を付けたのか。

きっとアムジャドのように、立派な人になって欲しいと思っていただろうに。
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