砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
それはアリさんも、悲しい表情にさせた。

「分かっていますだって。」

胸がズキッとした。

誰よりも近くにいて、我が子を見てきたんだものね。

分からないはずがない。

「命が長くないのも、知っていますって。」

私は母親の手を握って、うんと頷いた。

その瞬間、母親の目には涙が溢れ、私の腕にすがって泣いていた。

女の子は何があったのか分からないまま、お母さんに話しかけている。

その様子が何とも悲しそうで、私は泣きすがる母親が治まるまで側にいる事しかできなかった。


「どうだ?上手く伝わったか?」

私は首を横に振った。

「お母さん、もう悟っていたようです。」

「そうか。母親と言うのは、そういう者なんだろうな。」

土井先生も津田先生も、患者さんを診る振りをして、手が止まっている。
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