砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「やるせないですね。」

「そうだな。」

土井先生が、患者さんの背中を押した。

「なんで……子供ばかり、犠牲になるんでしょうね。」

私はボソッと言って、ハッとした。

「すみません。同じ病気でもお年寄りと子供が、真っ先に犠牲になるって、知っています。そうそう。そうですよね。」

頭では分かっている。

でもそれが現実だと、思い知らされる。

「千奈。ここにいる子供達は、決して不幸ではないぞ。」

「土井先生……」

「私達がいる。診てもらえるDrがいるだけで、まだ幸せってもんだ。」

そうだ。私がいる。病気を教えてあげられる、私がいる。

何も原因が分からず、死んでいく子供達がいる中で、医師がいるここの子供達は、幸せなんだ。

私が、幸せにしなきゃ、ならないんだ。
< 237 / 311 >

この作品をシェア

pagetop