砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「アムジャド?」

「チナの言う事は理解できる。でも、笑顔のないチナを見るのは辛い。僕と一緒にいても、幸せじゃないのかって。」

「そうじゃないわ!」

「誰だってそう思うだろう!」

重い空気が流れる。

アムジャドは、抱えた頭を激しく振った。

「もういい。僕はもう寝るよ。」

そう言って、本当に背中を向けて、寝てしまった。


アムジャドも疲れているんだ。

なのに彼に甘えて。

でも、どうしたらいいの?

無理に笑っても、亡くなった子供の顔がちらつく。

2度とあんな目に、皆を遭わせたくない。

私の目には、涙が流れた。


「今度は泣くのか。」

寝たはずのアムジャドが、ゆっくりと起き上がる。

「今夜は、自分の部屋で眠る。」

そう言ってアムジャドは、部屋を出て行こうとした。

「待って!アムジャド!」

伸ばした手は、彼によって振り払われた。

「たまには離れた方がいいかもしれない。」
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