砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
そして扉はアムジャドを吸い込み、容赦なく音を立てて閉じてしまった。

「そんな……」

その晩の夜は、悲しみで一睡もできなかった。


翌日。大きな欠伸をした私に、津田先生が笑った。

「よく眠れなかったのかい?」

「実は……」

頬をピシャッと叩いた私の隣に、津田先生が座った。

「アムジャドと喧嘩でもしたの?」

私は返事をしなかった。

「なあ、千奈ちゃん。この国に来て、本当に幸せか?」

私は津田先生の方を見た。

「なんだかこの国に来てから、千奈ちゃんの笑顔が減った気がするよ。」

「それ、アムジャドにも言われました。」

悩むってそんなに悪い事なのかな。

「ちゃんと息抜きしてる?患者さんの事を考えるのは、医者の仕事だけど、それだけでは潰れてしまうよ?」

「はい……」

分かっている。分かっているけれども、何が今の最善なのか、私には分かっていない。
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