砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「ジアーに、血液を運ぶんですか?」

「ああ。」

「私が持って行きます。」

「頼む。」

土井先生や津田先生から、採取した血液を貰うと、私は急いでお昼に出るジアーへのバスに乗った。

診療所の入り口には、まだ子供を抱えたお母さん達が群がっている。

私はそれを見つめた。

何が起こっているんだろう。


ぐったりしている子供。

熱はあるのに、風邪の症状はない。

私は何か恐ろしい病気が起こっているんじゃないかって、身体が震えてきた。

逸る気持ちを抑えながら、私は採決した試験管を、大事に持っていた。


1時間後、首都ジアーに着いて、私は病院まで走った。

「すみません。サハリで医師をしている者です。」

そう言うと奥から出て来た医師は、私の顔を見た。

「誰かと思ったら、いつぞやの女医さん。」

「あなたは……」

肺炎で亡くなった子を、看取ってくれたお医者さんだった。

「どうしたんだ?今度は。」
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