砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「土井先生は隣の建物ですか?」

「ああ。」

「今の話、伝えてきます。」

「千奈ちゃん。」

津田先生が、私の腕を掴んだ。

「ジアーまで往復して疲れただろう。ここで休んでいるといい。土井先生には、俺が伝えに行く。」

「はい。」

津田先生が診療所を出て、私は椅子に座った。

寝ている子供達から、荒い息遣いが聞こえる。

この子達は、静かに病気と闘っているんだ。


その時だった。

一人の子供が、涙目で私を見ていた。

「どうしたの?」

聞いても、微かな声で発せられた言葉が分からない。

私はそっと、その子の額に手を置いた。

その瞬間、その子はクシャミを一つした。

「大丈夫?」

聞いてもその子は、日本語が分からない。

ただひたすら、私の顔を見るだけだった。

私は何気に、その子の肺の音を聴診器で聞いた。

「これは……」

確かにスース―と音がする。

「ちょっと待っててね。」
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